婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 私がもうそろそろ嫁ぐ年齢になり、彼女が求める『貴族女性』になれたせいか、エリンの中で自分が教育する存在から、対等に話せる存在へと変わっていたことを最近感じていた。

 特徴的な大きな眼鏡をくいっと上げたエリンは、しばし考えた後で隣の椅子に座ったままの私へ言った。

「まずは……敵を知りましょう。アイリーン様。聞くところ、妹のような幼馴染みで貴族ではない平民女性ということしかわかりませんが、公爵家でそのような扱いをされている理由が私には理解しかねます」

「あら……エリン。それは、確かにそうね」

 デイジーは跡取り息子であるセシルへべったりとはりつき、まるで恋人同士のように振る舞う。

 けれど、セシルは無表情でデイジーへもあまり感情を出すこともない。勝手を許してはいるけれど、愛情を感じさせる振る舞いはない。

 ……そこは、私にも気になっているところだったのだ。