婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

「……どうしてです! 私をこのまま軽く見続けると言うのなら、私だってそうするわ! あの子を愛人として許容するというのなら、私だって同じことをする。貴族同士には、良くあることでしょう!?」

「アイリーン……」

「何なの! どうして、この状況で私が怒ってはいけないの! 不満を言ってはいけないの! いけないことをしているのは、貴方と彼女ではないの!? 私のことを、軽く扱わないで。もし、そうするのなら、別の人にすれば良いわ。どんな思いをしても良いから公爵家に嫁ぎたい女性は、いくらでも居るはずよ。婚約を解消しましょう。セシル」

 これまで言えなかった気持ちをぶつけるように、私は感情的に言い切った。

 セシルをじっと見つめていると、彼の頬に何かが流れた。

 え……涙?

 私はもちろんそれを見て、驚いた。

 彼の反応として予想していたのは、激怒して婚約解消を言い渡されるだろうと思っていたのだ。

 むしろ、私側の婚約者への感情的な直談判という不手際で婚約解消出来るのだから、喜び勇んで解消してくれるだろうと思っていたのだ。