婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 心を決めた私がクレイヴン公爵邸へと辿り着くと執事が慌てて出て来た。私は彼の制止を聞く事なく、セシルの部屋へと向かった。

 彼は机に座り書き仕事をしていたようだった。驚いた顔で立ち上がり、私へと近づいた。

 あら。いつも無表情だと思っていたけれど、驚いた顔も出来るのですね

「……アイリーン? どうした」

「セシル。申し訳ないのですけど、私と婚約解消していただけます? 私からは言えないのです。父に訴えても無駄でした。だから、貴方から婚約解消をしてください」

 私が彼に言いたいのは、これだった。

 だって、セシルには愛する女性が居るのだ。私は愛されることはない。

 もし、そうだとしたら、愛人込みで結婚してくれる条件をのむ人に変えて欲しい。

 私にはとても無理だった。このままでは、心が壊れてしまう。

「それは、出来ない……」

 いつも通り無表情のままでセシルはそう言い、私はイラッとして言った。