婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 私は出来るだけ感情をのせずに返した。

 だって、デイジーに何を言えば良い? 少しでも責めた言葉を出せば、途端に私が悪者になってしまう。

 それを理解しているから、穏便にこの場を済ませるしかなかった。

「ふふふ。本当に……セシルのお誕生日は、もうすぐですよね? アイリーン様は何かご用意されているのですか?」

「ああ……そうでしたわね」

 婚約者セシルの二十歳の誕生日は、もうすぐだ。

 私は現在十七歳なので、十八歳になった頃を目処に結婚式の準備などを進めることになっている。

 それを、彼女だって知っているはずだ。

「私も何か贈ろうかと思うのですが、アイリーン様と同じ物ではいけないと思うのです。ええ……私たち、被らない方が良いかしらと」

 不思議だわ。普通なら婚約者の誕生日のプレゼントを愛人候補の女性に相談されているなんて、私の貴族としての矜持(プライド)が許さない。

 ……そんな激怒する瞬間であるはずなのに、もう心が段々と麻痺しているのか、私はすぐには心の痛みを感じなかった。

「……そうですね。セシルに何を贈るか決定したら、デイジー様にはお知らせしますわ」