婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 政略結婚をする貴族同士なのだから、彼の隣に誰が居ようが、私は何も言わない……言うべきではないって耐えていた。

 ええ。耐えていたけれど、もうそろそろ限界なのよ。

「アイリーン。とにかく……もう気にするな。お前は何も悪くないのだから……」

 スティーブは私を宥めるように背中を撫でてくれて、私を近くに待たせていた馬車の中へと導いた。


◇◆◇


 悪いことというのは、続くものだ。

 こんな偶然、神様を呪いたくなる。

 色々とあった私が数日してから、気分転換に公園を散歩をしていたら、前方から歩いて来る女性は物凄く見覚えのある女性だった。

 何人かのクレイヴン公爵家の使用人を引き連れて、まるで、私と同じような貴族令嬢のよう。

「まあ……アイリーン様! 偶然ですね。こんにちは」

 そこには、にこにこと微笑むデイジー。ふわふわのストロベリーブロンドに、海色の瞳、愛くるしい人形のような顔立ち。

 平民だというのに、可愛らしいドレスを身に纏っていた。

 おそらくは、装飾品もドレスもセシルが買い与えているのだと思う。

「こんにちは。デイジー……良いお天気ですね」