婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。


 ……何……? こんな時には、婚約者面なの……?

 状況から見れば私が居なくなったからと聞いて、探してくれていたようだけど……。

「アイリーン! お前は……! セシルがどれだけ心配して探していたのか、わからないのか!」

 スティーブは私の手を引き、怒りの声を挙げた。

 心配をかけたと理解しつつも私はどうしても我慢出来ず、彼に反論した。

「……わかりませんわ! 私のことをいつも蔑ろにする婚約者なのですから、どうしてこんな時に心配など。いっそのこと、放って置いてくれれば良かったのです。セシルは私のことなんて、好きではないのですから」

 むしろ、婚約している私が居なくなれば、愛人デイジーともっともっと楽しく日々を生きられるのに。

 どうしてもイライラとしてしまいそう言えば、スティーブは悲しそうな表情になった。

「お前は……! なんという……ああ。わかっている。アイリーン。そうか。とりあえず、もう帰ろう。お前も……正常に判断出来る状況ではないのだから」

「……お兄様?」

 正常に判断なんて……いつもしていたわ。