婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。

 これまでに、何度も何度も訴えていたけれど、兄スティーブはこの言葉に頷いてくれたことはない。理解はしてくれるけれど、私がセシルと結婚することは変えられないと繰り返すばかり。

 兄スティーブは妹の私のことを、とても可愛がっていくれていると思っても……それでもだ。

「アイリーン。結婚するまで、もう少しだ。それまで、我慢すれば良い。わかってあげなさい。もし、結婚してもあの様子が続くようであれば、僕がなんとかしてあげるから」

 私がいつもとは違うと気がついたのか、スティーブは宥めるように言った。けれど、私は納得はいかなかった。どうしても。

 ついさっき階段から落ちようとする私を助けてくれた、セシルの逞しい腕、あれはデイジーのために存在するものであって、私のためにあるものではないのだ。

 本来なら、婚約者である私のためにあるものなのに……その正当性を、私以外の皆は認めながらも、デイジーのことは仕方がないと放置している。

 私の訴えだって、正当なものであるはずなのに。