婚約者は妹のような幼馴染みを何より大切にしているので、お飾り妻予定な令嬢は幸せになることを諦めた……はずでした。


「まあ……あの方って、貴方の婚約者ではなくて……?」

 お茶会の途中、扇で口を隠してこっそりと私に尋ねた彼女が、視線を向けた方向を見た。

 その光景を見れば、私へと言いづらくなる気持ちは理解出来る。

 私の婚約者の隣には、うら若き愛らしい女性がベッタリと張り付いて……いえ。右腕にしがみ付き、まるでこの男性は自分が所有していると言わんばかり。

 ……ああ。この方はあまり顔を見ない方だから、デイジーのことを知らなかったのね。

「ええ。確かに親同士がとり決めた、私の婚約者ですわね」

 私は彼女の問いに対し、感情を見せずに頷いた。彼女が言いたいことは、私本人にも痛いくらいにわかっていることだ。

 あんな……とんでもない光景を見れば、誰しも思ってしまうはずだ。

 今は婚約者同士かもしれないけれど、いつ彼女の方が良いから婚約解消したいと言い出すはわからない……と。

 私と彼女がヒソヒソと小声で何を話しているのか察したのか、円形テーブルに座る周囲は、なんだか気まずい空気になった。

 私が悪いわけでもないけれど。