ところがあれは忘れもしない達明くんたちの学年の卒業式の前日の放課後。
私は一人昇降口にいた。
ふと見ると達明くんが友達と帰るところだった。
すると突然
『俺のこと知ってる?知ってるよね?』
と早口で達明くんが声をかけてきた。
私はびっくりして黙ってうなづいた。

一緒にいた友達が『誰だ?あの子』といっていたが
その後達明くんがどう答えたかは聞こえなかった。

達明くんは達明くんでずっと声をかけようとしていてくれたのかもしれない。
でも当時彼と話したら私が先輩からいじめられたりするというのを
彼は心配してくれていたのかも知れないな、と思ったりもする。
卒業する前に話したいという気持ちを彼も持っててくれて
最後に話しかけてくれたのかもしれない。

その後、達明くんは公立高校に進学した。
偶然私も達明くんが通う学校の近くの高校に進学した。
通学途中で偶然会うかもしれないと少し期待していたが
最後に声をかけられてからあっていない。
彼も34才になってるはずだ。
今どこで何をしてるのかわからないが時々思い出しては会いたいなと思うときがある。