離してくれない若頭さま

【海斗】

縁側に腰をかけタバコを吸う。


周りはシーンとしている。


「春山様、お部屋にご案内終わりました」


そう言いながら、俺の近くに座るあきら。


「あきら、あの女のこと調べておいてくれ」


「わかりました!調べておきますね!」


「今日はもう、休んでいい、お疲れさん」


「はい!ありがとうございます!」


「お先に休ませていただきます!失礼しやす!」


あきらが縁側から離れるのを確認するとタバコに溜まった灰を灰皿に落とす。


今日はどっと疲れた


これから、あの女を守らないといけない。


女と関わらないといけないと思うだけで嫌になる。


春山さくら・・・


あの、女は表情がコロコロ変わる


俺が大学に行った時もそうだった


俺はあの大学の生徒ではない。


大学の理事長と俺の親父、影山組組長は友人関係であり。


理事長は俺、指名で仕事の依頼をしてきた、


でも、なんで俺なんだろうか・・・


めんどくさい、依頼じゃないことを祈って・・・
朝早くから大学に向かった。


理事長からは、学生が沢山いるからと
「言葉遣い」「表情」「格好」をしっかり気をつけて欲しい


という内容の連絡があきらに送られていたみたいだ。


車の中でしつこく言われる。


(お願いですから!殺気出さないように!)


(僕は別の仕事で同行できませんので頼みますよ!)


無視を続ける俺に、あきらは負けず。


(海斗さん!お願いしますよぉ!)


(何かあれば俺が、怒られるんですよ!)


(なので、頼みますよぉぉ〜!!)


必死に言ってくるあきらを横目に降参した俺は
短く(あぁ…)と返事をする。


返事を聞いた、あきらは嬉しそうにニコニコ笑う。


(髪の毛はセットされてるからこのままでいいか…)


(服は組で着替えてもらったし)


(じゃあ、これつけてください)


渡されたのは黒眼鏡。


(あとは、表情と言葉遣いですね…)


はぁ・・・
たかが大学に行くだけなのに本当にめんどくさい


(んーどうやってやるかなぁ)


笑顔でいてもらう?ずっと笑顔でもあれか…と1人でぶつぶつ呟いているあきら。


あきらは、表情と言葉使いをどうしようか、どんな感じで行こうか悩んでいるようだった。


しょうがない、こいつのためにもやってやるか


(こんな感じでいいかな?あきら?)


声のトーンをあげ、ニコッとしてみる。


あきらは、驚いた表情をしたまま固まっていた。


数秒固まったかと思えば・・・


(最高ですよぉぉぉぉ!)


突然、叫びやがるあきらをギロっと睨む。


車のドアを開け外に出る。


(海斗さん!絶対!変なことしないでくださいね!)


(頼みまs)


バタン!あきらの言葉を最後まで聞かず車のドアを閉める。


メガネをつけ、大学がある方向へ歩き始めた。


歩いていると、後ろから誰かにぶかられる。


誰だよまじで・・・


後ろに目線をやると、女がいた。


よりによって女にぶつかられるなんて。


(はっ!ご、ごめんなさい!あの…しっかり前を見ていなくて…)


ものすごい勢いで頭を下げ、ゆっくり頭を上げる女。


不安そうな顔で見つめてくる。


本来の俺であれば、睨みつけて、舌打ちをして歩き出す。


でも、この女も大学の生徒。


(いえ、気にしないでください)


にこっと笑って見せれば、女は俺の顔をジーっと見つめてくる。


見てんじゃねぇよ・・・


そう言いたいのをグッと抑える。


(何か僕の顔についている?)


(い、いえ!とてもかっこいいな〜!と思いまして!)


顔を赤らめて恥ずかしそうにいう女。


かっこいい・・・、そんなのどうでもいい。


女嫌いの俺からすれば、言われても嬉しくない。


かっこいいは、ただの、こびを売るためだけの言葉。


女たちは息をするように、かっこいいと口にする。


本当にめんどくさい。


クスリと笑って見せ(ありがとう)と伝え、そのまま歩き出す。


後ろから視線を感じたが、無視をして大学を目指す。


キャンパス内に入ると沢山の視線を集める。


その視線いイライラしながらも、顔に出さず道を歩いていく。


感情を殺し、無意識に歩いくと[職員入り口]という
看板が見えてきた。


ようやく着いたか・・・


中に入ると、1人の男が立っていた。


(影山海斗様ですか?)


(はい、理事長から依頼を受けて)


(お待ちしておりました、こちらへどうぞ)


理事長室に案内され、理事長と話を始める。


依頼内容は2つ、このキャンパス内に置いて
薬物の取り扱いが行われているから確認してほしいとのこと

確保はせず、上手いこと情報だけ聞いて教えて欲しいこと。


その、依頼を聞いた瞬間力が抜けてしまう。


もっと、大きな依頼かと思えば、ただの情報集め・・・


他の組員で良かったはずだ・・・


話を聞いていくと、親父が勝手に引き受けた見たい。


勝手なことしやがって・・・


まぁ、依頼は依頼。


しっかりと解決に持って行けるよう
どこまでやっていいのか、どこで薬物の取引が行われているかの情報があるか確認をした。


理事長室から出る時、理事長から
生徒と接触がある場合には、「言葉遣い」「表情」を
気をつけて欲しいと言われた。


はい、はい、わかってますよ・・・


さっさと終わらせて帰ろう


理事長がくれた情報では、食堂で誘って
別の場所で取引が行われているという情報だった。


とりあえず、食堂に向かい中に入る。


中に入ると、沢山学生がいる。


食堂内をざっと見渡すと怪しい動きをする男が2人見える、こそこそと話していて、おそらくあいつら。


その近くには、朝の女ともう1人の女がいるのを確認する。


怪しい男たちの話しを聞く場所にはベストポジションにいた。


運よく、女たちがこちらを見ていたので、ニコッと笑いながら女に近づく。


ぶつかってきた女は、怪しい男2人組の
丁度後ろに座っていた。


適当に挨拶をして、適当に会話をしながら
男の話に耳を傾ける。


そして、1人の男がカバンからこっそり白い粉を出すのを確認する。


男たちに向けていた視線が自分に向いているのかと
思った女は顔を少しずつ赤らめる。


怪しまれない為にも適当に言葉を話す。


(ケチャップついてるよ?)


そう伝えれば、女の顔一気に赤くなり、素早い動きでスマホを取り出し、口を拭いていた。


その間も、男たちから目を離さずにいた。


男たちが立ち上がると同時に女がお礼を言うのが聞こえる。


丁度いいタイミングで話してくれる。


男たちが歩き出すのを確認すると、適当ににっこと笑い
男たちを追っていく。


バレないよう、2人を追うと人気が少ない
古い階段の近くで止まる。


男たちの話を盗み聞きするのと同時にボイスメモを回す。


話が終わるのを確認すると、近くの物陰にに隠れ
男たちが去っていくのを待つ。