朝――
「うぅ……頭痛い……」
僕は朝8時に目を覚ました。
人生で初めての二日酔いだった。頭が割れそうに痛かった。
「昨日、やらかしたなぁ……」
そう思いながらも、まだ誰も起きていなかったから、僕は静かに2階へ上がり、そのまま二度寝をした。
――9時。
僕がリビングへ降りると、もうモンちゃんが起きていた。
「おはよう」
「おはようございます……」
僕はモンちゃんの横に座りながら、ぼーっと携帯をいじっていた。
するとモンちゃんがこちらを見て言った。
「ラーメンいる?」
「え、いいんですか?」
「あるよ」
そう言ってカップラーメンを渡してくれた。
「ありがとうございます……」
二日酔いの身体には、その温かさがやけに染みた。
食べ終わった後、僕たちは片付けをして、忘れ物がないか確認しながら荷物を車へ積み込んだ。
「じゃあ最後に写真撮ろうか」
誰かがそう言った。
その瞬間、僕は少し後悔した。
(この3日間、ずっと6人でいたのに……“集合写真撮りたい”って、自分から言えたの最後の最後だったな……)
でも――
「もちろん!」
「撮ろう撮ろう!」
みんなが笑顔で応えてくれた。
それがすごく嬉しかった。
そして僕たちは別荘を後にした。
Ⅰちゃん親子はそのまま帰宅し、僕たち――モンちゃん、Nさん、彼氏、そして僕は郡山市のラーメン店「マルシン」へ向かった。
「今日は晴れてるねぇ」
「昨日と全然違う」
車内では、山道を走りながらモンちゃんの音楽が流れていた。
「この曲、モンちゃんが作ったんですか?」
「そうそう」
「すご……!」
窓の外には青空と自然が広がっていて、僕は夢中で景色を撮っていた。
最初に向かったのは、モンちゃんの実家があった浪江町だった。
海岸へ着くと、潮風が優しく吹いていた。
「ここに家があったんだよ」
モンちゃんが静かに言った。
「……そっか」
僕は海を見つめた。
(浪江町の海って、本当に綺麗だな……)
震災前を僕は知らない。
でも、空気も自然も全部が心地よくて、“いい場所だ”と心から思った。
その後、僕たちは請戸小学校へ向かった。
今は震災資料館になっていた。
中へ入った瞬間、僕は息を呑んだ。
「……」
崩れた瓦礫。
ボロボロになった天井と壁。
床が凹んだ体育館。
全部が衝撃だった。
「ここまで津波が来たんだよ」
案内表示には、津波到達地点が示されていた。
「一階全部……浸水したんだ……」
校舎を歩きながら、僕は強く思った。
(災害って、こんなにも恐ろしいんだ……)
(僕も、誰かを助けられる人になりたい……苦しんでいる人の力になれる人になりたい……)
請戸小学校のことは、テレビで見たことがあった。
非常階段を登って避難する子どもたち。
「全員助かったんだよね」
「うん、山に避難できたから」
それを聞いて、僕は少し安心した。
帰る前、感想ノートが置かれていた。
僕はペンを取り、こう書いた。
『すっごく感動しました。この小学校の全員が助かって、すっごく良かったです。これからもファイトです。』
書き終わった時は、純粋な気持ちだった。
でも――
その後に行った伝承館で、僕は自分の言葉を後悔することになる。
展示の中に、一枚の写真があった。
説明文にはこう書かれていた。
『娘が通っていた小学校の前で、手を合わせる母親――』
僕はその文章を見た瞬間、請戸小学校で書いた感想を思い出した。
(請戸小学校は助かった……でも、他の学校では亡くなった人もいる……)
(もし遺族の人が、僕の文章を見たら……どんな気持ちになるんだろう……)
胸がくるしくなった。
「……次からは、もっと考えて書こう」
僕はそう心に決めた。
その後はおみやげショップへ行き、色々買い物をした。
そして僕たちは、いわき市へ戻った。
展望台へ行ったり、ララミュウへ行ったり――
「ここ景色いい!」
「写真撮ろう!」
沢山写真を撮って、沢山笑った。
モンちゃんの家へ帰ると、ドリーが出迎えてくれた。
「わっ、来てくれ!」
一日目と違い、今日はずっと僕の近くに座ってくれていた。
「かわいい……」
その後、Nさんは帰宅し、僕たちはココアを飲みながらゆっくり話をした。
30分ほど休憩した後、モンちゃんと彼女さん、そしてドリーが、いわき駅まで見送ってくれることになった。
車の中では、ドリーが僕の膝の上に座ってくれた。
「え、かわいすぎる……」
「ドリー懐いてるじゃん」
「めっちゃ嬉しい……」
そして、いわき駅へ到着した。
駅弁を買い、最後の記念撮影をした。
時間が来るまで、みんなで色々話をした。
すると、モンちゃんの彼女さんが言った。
「これ、お土産!」
「え!?ありがとうございます!」
すごく嬉しかった。
でも――
別れの時間は、すぐに来た。
(寂しい……)
(このまま終わりたくない……)
僕はずっと怖くて出来なかったことを、初めて自分からしようと思った。
(拒否されてもいい……嫌われてもいい……)
(でも後悔したくない……!)
僕は勇気を振り絞って言った。
「……ハグ、してもいいですか?」
モンちゃんは少し驚いた顔をした後、笑って言った。
「もちろん」
そして、ぎゅっと抱きしめてくれた。
ちょっと痛かった。
でも、それ以上に嬉しかった。
胸の奥から、何かが溢れてきた。
(もっと頑張って生きよう)
そう思えた。
僕はホームで泣いてしまった。
電車に乗り込み、ひたち号は東京へ向かって走り出した。
発車前、突然モンちゃんから電話が来た。
「もしもし!? モバイルバッテリー忘れてる!」
「えっ!?」
僕は焦った。
でも、もう取りに戻ることはできない。
「来年行った時で大丈夫です。保管してもらえたら嬉しいです」
「わかった!」
そう言って電話を切った。
車窓の外はもう真っ暗だった。
車内では彼氏と駅弁を食べながら話していた。
「昨日の四十%の酒、一気飲みはやばかったよ」
「ほんとに反省してる……」
「次からは禁止ね?」
「はい……」
そうして笑い合った。
東京駅へ着き、新幹線へ乗り換える。
「帰りってなんでこんな早いんだろうね」
「行きは長かったのにね」
気づけば、もう静岡だった。
名古屋駅へ到着し、急いであおなみ線へ乗り換えた。
すると彼氏の携帯にモンちゃんから電話が来た。
少し話した後、彼氏が言った。
「空くん、代わる?」
「えっ、いいの!?」
電話越しにモンちゃんの声が聞こえた。
「ハグ、嬉しかったよ」
「……!」
「あの時、俺もうるうるしてた。濃厚な3日間だったな。離れるの、本当に寂しい」
その言葉を聞いた瞬間、僕はまた泣いてしまった。
(本当に、この二人に出会えて良かった……)
最寄り駅へ着き、スーパーへ寄ってから家へ帰った。
お風呂へ入って、そのまま布団へ倒れ込むように眠った。
――この3日間、本当に幸せだった。
「また来年、絶対会いに行こう」
そう思った。
そして、さっき別れたばかりなのに、もう会いたくなっていた。
でも明日からは、またいつもの生活が始まる。
「切り替えて頑張ろう」
そう思いながら、僕は静かに目を閉じた。
「うぅ……頭痛い……」
僕は朝8時に目を覚ました。
人生で初めての二日酔いだった。頭が割れそうに痛かった。
「昨日、やらかしたなぁ……」
そう思いながらも、まだ誰も起きていなかったから、僕は静かに2階へ上がり、そのまま二度寝をした。
――9時。
僕がリビングへ降りると、もうモンちゃんが起きていた。
「おはよう」
「おはようございます……」
僕はモンちゃんの横に座りながら、ぼーっと携帯をいじっていた。
するとモンちゃんがこちらを見て言った。
「ラーメンいる?」
「え、いいんですか?」
「あるよ」
そう言ってカップラーメンを渡してくれた。
「ありがとうございます……」
二日酔いの身体には、その温かさがやけに染みた。
食べ終わった後、僕たちは片付けをして、忘れ物がないか確認しながら荷物を車へ積み込んだ。
「じゃあ最後に写真撮ろうか」
誰かがそう言った。
その瞬間、僕は少し後悔した。
(この3日間、ずっと6人でいたのに……“集合写真撮りたい”って、自分から言えたの最後の最後だったな……)
でも――
「もちろん!」
「撮ろう撮ろう!」
みんなが笑顔で応えてくれた。
それがすごく嬉しかった。
そして僕たちは別荘を後にした。
Ⅰちゃん親子はそのまま帰宅し、僕たち――モンちゃん、Nさん、彼氏、そして僕は郡山市のラーメン店「マルシン」へ向かった。
「今日は晴れてるねぇ」
「昨日と全然違う」
車内では、山道を走りながらモンちゃんの音楽が流れていた。
「この曲、モンちゃんが作ったんですか?」
「そうそう」
「すご……!」
窓の外には青空と自然が広がっていて、僕は夢中で景色を撮っていた。
最初に向かったのは、モンちゃんの実家があった浪江町だった。
海岸へ着くと、潮風が優しく吹いていた。
「ここに家があったんだよ」
モンちゃんが静かに言った。
「……そっか」
僕は海を見つめた。
(浪江町の海って、本当に綺麗だな……)
震災前を僕は知らない。
でも、空気も自然も全部が心地よくて、“いい場所だ”と心から思った。
その後、僕たちは請戸小学校へ向かった。
今は震災資料館になっていた。
中へ入った瞬間、僕は息を呑んだ。
「……」
崩れた瓦礫。
ボロボロになった天井と壁。
床が凹んだ体育館。
全部が衝撃だった。
「ここまで津波が来たんだよ」
案内表示には、津波到達地点が示されていた。
「一階全部……浸水したんだ……」
校舎を歩きながら、僕は強く思った。
(災害って、こんなにも恐ろしいんだ……)
(僕も、誰かを助けられる人になりたい……苦しんでいる人の力になれる人になりたい……)
請戸小学校のことは、テレビで見たことがあった。
非常階段を登って避難する子どもたち。
「全員助かったんだよね」
「うん、山に避難できたから」
それを聞いて、僕は少し安心した。
帰る前、感想ノートが置かれていた。
僕はペンを取り、こう書いた。
『すっごく感動しました。この小学校の全員が助かって、すっごく良かったです。これからもファイトです。』
書き終わった時は、純粋な気持ちだった。
でも――
その後に行った伝承館で、僕は自分の言葉を後悔することになる。
展示の中に、一枚の写真があった。
説明文にはこう書かれていた。
『娘が通っていた小学校の前で、手を合わせる母親――』
僕はその文章を見た瞬間、請戸小学校で書いた感想を思い出した。
(請戸小学校は助かった……でも、他の学校では亡くなった人もいる……)
(もし遺族の人が、僕の文章を見たら……どんな気持ちになるんだろう……)
胸がくるしくなった。
「……次からは、もっと考えて書こう」
僕はそう心に決めた。
その後はおみやげショップへ行き、色々買い物をした。
そして僕たちは、いわき市へ戻った。
展望台へ行ったり、ララミュウへ行ったり――
「ここ景色いい!」
「写真撮ろう!」
沢山写真を撮って、沢山笑った。
モンちゃんの家へ帰ると、ドリーが出迎えてくれた。
「わっ、来てくれ!」
一日目と違い、今日はずっと僕の近くに座ってくれていた。
「かわいい……」
その後、Nさんは帰宅し、僕たちはココアを飲みながらゆっくり話をした。
30分ほど休憩した後、モンちゃんと彼女さん、そしてドリーが、いわき駅まで見送ってくれることになった。
車の中では、ドリーが僕の膝の上に座ってくれた。
「え、かわいすぎる……」
「ドリー懐いてるじゃん」
「めっちゃ嬉しい……」
そして、いわき駅へ到着した。
駅弁を買い、最後の記念撮影をした。
時間が来るまで、みんなで色々話をした。
すると、モンちゃんの彼女さんが言った。
「これ、お土産!」
「え!?ありがとうございます!」
すごく嬉しかった。
でも――
別れの時間は、すぐに来た。
(寂しい……)
(このまま終わりたくない……)
僕はずっと怖くて出来なかったことを、初めて自分からしようと思った。
(拒否されてもいい……嫌われてもいい……)
(でも後悔したくない……!)
僕は勇気を振り絞って言った。
「……ハグ、してもいいですか?」
モンちゃんは少し驚いた顔をした後、笑って言った。
「もちろん」
そして、ぎゅっと抱きしめてくれた。
ちょっと痛かった。
でも、それ以上に嬉しかった。
胸の奥から、何かが溢れてきた。
(もっと頑張って生きよう)
そう思えた。
僕はホームで泣いてしまった。
電車に乗り込み、ひたち号は東京へ向かって走り出した。
発車前、突然モンちゃんから電話が来た。
「もしもし!? モバイルバッテリー忘れてる!」
「えっ!?」
僕は焦った。
でも、もう取りに戻ることはできない。
「来年行った時で大丈夫です。保管してもらえたら嬉しいです」
「わかった!」
そう言って電話を切った。
車窓の外はもう真っ暗だった。
車内では彼氏と駅弁を食べながら話していた。
「昨日の四十%の酒、一気飲みはやばかったよ」
「ほんとに反省してる……」
「次からは禁止ね?」
「はい……」
そうして笑い合った。
東京駅へ着き、新幹線へ乗り換える。
「帰りってなんでこんな早いんだろうね」
「行きは長かったのにね」
気づけば、もう静岡だった。
名古屋駅へ到着し、急いであおなみ線へ乗り換えた。
すると彼氏の携帯にモンちゃんから電話が来た。
少し話した後、彼氏が言った。
「空くん、代わる?」
「えっ、いいの!?」
電話越しにモンちゃんの声が聞こえた。
「ハグ、嬉しかったよ」
「……!」
「あの時、俺もうるうるしてた。濃厚な3日間だったな。離れるの、本当に寂しい」
その言葉を聞いた瞬間、僕はまた泣いてしまった。
(本当に、この二人に出会えて良かった……)
最寄り駅へ着き、スーパーへ寄ってから家へ帰った。
お風呂へ入って、そのまま布団へ倒れ込むように眠った。
――この3日間、本当に幸せだった。
「また来年、絶対会いに行こう」
そう思った。
そして、さっき別れたばかりなのに、もう会いたくなっていた。
でも明日からは、またいつもの生活が始まる。
「切り替えて頑張ろう」
そう思いながら、僕は静かに目を閉じた。


