鮫ちゃん、君の名前を聞かせて


「どこだよっ…」


大きな公園に辿り着いた。


「鮫ちゃん…?」


ペタンと座り、泣きじゃくっていた。


「鮫ちゃん、やっと見つけた…!」


近付こうとしたら、立ち上がろうとして、俺から逃げようとした。

でも逃げきれなくて、俺の腕の中に収まった。


「寒いから、家帰ろう?この後のことは俺とか事務所がなんとかするから…」


立とうと促すが、全く立とうとしない。

仕方無し、お姫様抱っこで家まで連れ帰った。


家に着くと、鮫ちゃんは


「好き、どこにも行かないで」


と言った。

どこか掠れた声だった。

初めて聞いた声に、驚いた。


「す…好き?それは、アイドルとして?人間として?」

「人として」

「分かった。ありがとう。俺も好き」


抱き締めた。


当然、翌日からは週刊誌の記者があちこちにいるのが分かっていたが、どうすることもできない。

マネージャーの車でまきながら鮫ちゃんの家に帰る他なかった。


「ただいま…」

「おかえり」


その日の晩、何となく答えてくれるかなと思って聞いてみた。


「鮫ちゃん、名前何て言うの?」

「…茜」

「茜か、これからは茜って呼ぶね」

「うん」

「茜、大好きだよ」