鮫ちゃん、君の名前を聞かせて


日々、バラエティロケやドラマの撮影、歌番組の出演に追われていたけれど、帰ってくると、鮫ちゃんが家で待っていた。


同居生活が始まって3ヶ月経つ頃には、鮫ちゃんへの興味は、愛情に変わっていた。

でも相変わらず、彼女の声は聞いたことがない。


「ただいまー!」


でも少し変わった。

声をかければ、少しだけ目を向けてくれる。

無表情のままだけど、それでも良かった。

寝る時、未だにソファに逃げようとするから、抱き寄せて寝るのだけれど、毎回言っている。


「好きだよ、鮫ちゃん」


と。

至近距離で見つめてくる鮫ちゃんの表情は、少しも変わってくれないけど。


ある、仕事から帰ってきた日。


「ただ…あれ?」


鮫ちゃんの姿がなかった。

代わりに、紙が床に散乱されていた。


「泥棒猫、消えろ、ふざけんな…?」


よく見ると、水滴の跡がある。


「鮫ちゃん!」


誰もいない家の中に虚しく響く。


俺は慌てて家を飛び出した。

水滴は乾いてなかった。

そう遠くは行ってない。

走って、走って、走って、鮫ちゃんを探した。