放課後

放課後、雨が降っていた。

傘を忘れた私は、昇降口で立ち尽くしていた。
すると後ろから、ぶっきらぼうな声がする。

「……入る?」

振り返ると、同じクラスの結城くんが黒い傘を少しだけ傾けていた。

「え、でも……」

「風邪ひくほうが面倒」

それだけ言って歩き出す。
私は慌てて隣に入った。

雨の音が近い。
肩が少しぶつかるたび、心臓が変な音を立てる。

「結城くんって、もっと怖い人だと思ってた」

「よく言われる」

「でも優しいんだね」

その瞬間、彼が少しだけ笑った。

「……優しくしてんの、たぶんお前だけ」

雨よりずっと大きな音が、胸の中で鳴った。