夕方お酒を買わずに家に帰ると、慶太に褒められた。
慶太は熱いコーヒーを淹れながら、泣き腫らした目のれねに何も聞かなかった。
夜だった。
レネは窓を開けて外の野良猫を呼び込んだ。
野良猫を撫でていると、慶太が来て、ミルクのたっぷり入ったコーヒーを手渡した。
「大人は悲しい時何も言わないの?」
慶太が聞いた。
「別に。言っても意味ないもん」
「それで悲しいのは治らないんでしょう?」
「別になんもないよ。」
猫を抱き上げたれねに屈んで、慶太がれねの髪を撫でた。
「泣いたらすっきりするかもね。」
れねはそこでやっと泣き出した。
慶太はいつもの顔で、普段と同じ調子で、れねの髪をくしゃくしゃになるまで撫で続けた。
刹那、真面目な顔。
「それ、僕じゃいけないの」
「それって?」
星空を見上げて慶太がため息をついた。
「まったく、僕がいないと駄目なんだから。」
おわり
