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突然、むにっと弾力のある感触に目を覚ます。
「んっ……!」
霞んだ視界に見えたのは、甘い笑顔でこちらを見る悠醐だった。
「おはよう、一葉。もうそろそろ起きる時間だ」
「ゆうご、さん」
彼がキスして起こしてくれた。目が覚めて一番に見る顔が彼で、一葉は自然と満面の笑みを浮かべる。
「なんでそんなに笑う」
そう言う悠醐も、うれしそうに笑っていた。きっと、一葉が考えていることはお見通しなのだ。ふたりは微笑みあって、引き寄せられるように唇を合わせた。
(こんなに幸せな朝は、いつぶりだろう?)
体のけだるさも、腹の奥に感じる疼きも、すべてが愛おしかった。
その後、一葉は支度を済ませ、一悠醐が運転する車に乗って出勤した。
彼は運転中も、できるだけ手を握ってくれていた。危ないとはわかってはいたのだが、一葉も彼と片時も触れたいという気持ちのほうが強かった。
「篠宮ちゃん、その……大丈夫?」
「五十嵐先生と何かあったの?」
「へ……?」
二日ぶりに出勤した職場で、悠醐のことを尋ねられて、一葉は目を丸くした。
主任には体調不良と伝えていたのだが、どうやらみなは、違う話を信じているようだった。
藤木先輩に尋ねると、耳を疑うような言葉が返ってきた。
「実は五十嵐先生と篠宮ちゃんが離婚するって噂が立ってて」
「えっ?」
耳を疑うような内容に、一葉は眉間に皺を寄せた。
事務員がそもそも噂を聞いたのは看護師かららしい。
どこから漏れたかわからないが、先日の懇親会で一葉が突然姿を消し、行方不明という話を医師から看護師へ……そして最終的に事務員にも回ってきたようだ。
離婚するという話に、もともと悠醐と一葉は上手くいっていなかったのだという補足付きで……。
「いえ。わたしたち、絶対に離婚はしません。ご心配をおかけして申し訳ございません」

