その艶のある声に、一葉の体の芯にじんと熱がともる。少しだけ怖くなりがらも、彼の命令には背けない。
もう普通に戻っていいと言われたのに、変に心地よく感じている自分もいる。
一葉が顔を熱くして彼の隣に座ると、至近距離で熱く視線が絡んだ。
彼の瞳に、恍惚とする自分の顔が揺れている。
「一葉」
「ゆう、ごさ……」
言葉にならない声が、かすかに喉からこぼれた。
触れてほしい。そう願っているのに、怖い。
このまま彼に溺れてしまうことを、一葉はわかっているから。
ほんの一瞬、揺れたその気持ちを、悠醐は見逃さなかった。
「嫌なら、止める」
低く、静かな声が鼓膜を揺らした。
判断を委ねるようでいて、その指はすでに一葉の顎に触れている。
逃げ道を残す言葉とは裏腹に、距離はゆっくりと詰められていく。
「でも、その顔で言われても説得力がないな」
くすり、と喉の奥で笑った瞬間、力強く腕を引かれた。
バランスを崩した体が、そのまま悠醐の胸へと落ちる。背中に回された手が、腰のラインに沿って静かに滑った。
壊れ物に触れるようなやさしさなのに。そこに、逃がす意思は少しも感じられない。
「……いいか?」
形だけの確認をされる。
悠醐を愛している一葉が、この距離でこの眼差しで見つめられて、拒めるはずがないのに。
一葉はそっと唇を噛んだ。
「やだって言っても、止めないでしょう?」
ずっと意地悪ばかりされてきた、一葉の小さな反抗だった。
一瞬の沈黙のあと、悠醐は一葉の顔を覗き込み、わずかに笑った。
「ああ、止めないよ」
迷いなく告げられたその言葉と同時に、唇がそっと重なった。

