孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


悠醐の言葉は嘘じゃない。一葉は本能でそう感じ取った。
彼の体温、眼差し。声色……そして再会してから積み上がってきた、数々の愛情。いびつではたから見たらおかしいと思えるようなことも全部、今なら自分への愛情の裏返しだと思える。

「……悠醐さん、わたしも」

一葉は自分を抱きしめる腕を震える指先でぎゅっと握った。
込み上げる涙を呑み込んで、無理やり口角を上げる。

「わたしも、悠醐さんを愛してます」

やっと伝えられた。五年前から、想い続けた彼に。
体を包んでいた腕が、ゆっくりとほどけていく。
わずかに体を引いた彼と、ようやく目が合った。
悠醐は、何かに耐えるように目を細め、一葉に熱い視線を送る。
そして、引き寄せられるように唇が合わさった。
あのときのように、悠醐は優しく、何度も唇を重ねる。

ふたりはしばらく抱きしめ合った後に、肩と肩を合わせ、寄り添いあう。
遠い場所でかもめが寄り添うようにして広大な空を羽ばたいていく。
自由に、何にも縛られることなく。

すぐ近くに感じていた真白な入道雲が、気づいたらマジックアワーのひとつの背景に溶け込んでいた。夜はもうすぐそこなのだ。

(やっぱり、戻らなくていい)

「一葉?」

ぎゅっと強く握られた左手に、驚いたように悠醐は声をもらす。
あのときの、まだ傷を負っていない自分たちに戻れたら。

そう思ったが、今は必要ないと思う。
あのときからの延長線上に今があるとしたら、痛みすらも愛おしい。

「わたし、もうこの手を離しません。悠醐さんに一生、ついていきます」

一葉が笑いかけると、悠醐は自然に笑みをもらした。
心からの温かい笑みに、一葉は見惚れる。

「ああ、一生離さない」

悠醐はもう一度、一葉に唇を合わせた。
だが次のキスは、なかなか離れていかなかった。