その力強さに、どきっと大きく心臓が跳ねる。
なにが、起きたのだろう。
わかるのは、耳元で名前を呼んでくれたのが悠醐だということ。
汗ばんだ肉体、背中越しに伝わってくる鼓動は。壊れるんじゃないかと思うほど、激しいこと。
そして、大好きな彼の香りだけ。
「どうして、悠醐さんがここに……?」
すると悠醐は、一葉の耳元で笑った。
「どうして? 君を愛してるから」
悠醐の言葉に息を呑む。
彼の体に包まれているからもあるが、かっと熱が出たように全身が熱くなる。
「愛してる……なんて。そんなわけ、ない」
悠醐は、一葉の言葉に目を見開いた。
一葉は震えながら笑った。
彼の言葉が、信じられなかった。
なぜなら、自分は一生かかっても悠醐に許されないことをしてしまったから。
「……君は、知らなかったんだよな」
悠醐の言葉に、息を呑む。
「俺はてっきり、君も知っているものだと思っていた。君の父親が俺にしてきた数々のことを……」
悠醐の言葉に、一葉は弱々しく首を横に振った。
「ごめんなさい。全然、知らなくて……てっきり、お父さんはわたしが悠醐さんと別れたら、手を引いてくれるとばかり思っていたのに……」
「手を引く、とは?」
悠醐の困惑した声に、一葉は申し訳なくなった。彼も、何も知らない。ふたりの恋が。どうして終わったのかも。
「わたしは、悠醐さんと別れるくらいなら家を出るつもりだった……けど、お父さんに神城グループとの縁談を受け入れなければ、悠醐さんの医者としての道を絶たせると脅されて……」
かすれた声でなんとか事実を告げると、悠醐はきつく一葉を抱きしめた。
「そんな……」
「わたしは、本当は別れたくなかった。だけど……悠醐さんが頑張っているのを知っていたから、自分の家族の事情に巻き込んで、あなたの道を、終わらせたくなかったの」

