一葉は今までのうっ憤を吐き出すように、海に向かって叫ぶ。
遅れて、熱い涙が頬を伝った。
これは誰に向けての涙なのだろう。過去の父を信じた自分への失望の涙なのか。
単純に悠醐を地獄に墜とした父親への憎しみからなのか。
それとも、大切なことを何も言ってくれなかった、悠醐へなのか。
答えは、全部だ。
一葉はぼんやりと、果てしなく突き抜ける空を見上げた。
「ねぇ、お母さん。わたしもう、どうやって生きていったらいいのかわからない……」
悠醐を愛している以上、苦しみが続く。
忘れようなんて思っても、無駄なのはわかっている。
昔も今も、彼が好きだ。変わった彼にもう一度。恋をしてしまった。
だが、自分は彼を愛す資格がない。とっくの昔に。五年前に、父に奪われていた。
『一葉、好きだ。俺と付き合ってほしい』
テトラポットのすぐ横。その昔――この場所で、悠醐が想いを伝えてくれた。
初めて抱きしめられた場所。そして初めてキスした場所。
「あの頃に戻りたいなぁ……」
また一から、ここで悠醐と恋を始めたい。そして、父親に何か言われたとしても、家を出て、彼と一緒になりたい。誠に日本から追い出されてもいい。彼となら、世界中どこへでも暮らしていける気がするから。もし引き離されたとしても、自分が悠醐を探し出すから。
「悠醐さん、悠醐さん……!」
一葉はその場に崩れ落ち、声を上げて泣いた。
夢を見てしまったからだろうか。再び、彼と始まる未来を。
また愛されていると思ってしまったから、こんなにつらいのだろうか。
「悠醐さん、ごめんね……愛してる……」
心からの声がこぼれたそのとき、突然後ろから力強く抱きしめられた。
「……っ⁉」
「一葉、ここにいたのか」

