孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


◆◆◆
 
「それじゃあ、五十嵐先生、また食事にでも行きましょう」

悠醐は笑顔で会釈し、他病院の医師と別れる。

(一葉、どこにいるんだ?)
悠醐は周囲に視線を走らせた。彼女の姿が見当たらない。電話も何度も何度もかけているが、一向に出る気配がないのだ。

(……おかしい)

席を外すとしても、これほど長く戻らない理由がないはずだ。どこぞの婦人と意気投合して話しているだけならいいのだが、人が多く入り乱れ、ぱっと認識できない。

もしかして――。

「悠醐さん、おひとりですか?」

背後から声がかかる。振り返ると、そこにはにこやかに笑う清香がいた。
だが、その目の奥は笑ってはいなかった。

「一葉を見てないか」
「……さあ? 少し外に出られたのでは?」

淀みのない返答だが、そのわずかな沈黙に、違和感が残る。
悠醐は一歩、距離を詰めた。

「知ってるんだろう」 

悠醐がいつになく真剣な表情で尋ねるが、清香はわざとらしく肩をすくめるようにして微笑んだ。

「知りませんわ。わたし、あの方に興味がありませんもの」