孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む

「そうだよな。でも、堂々としていてくれ」

そう言った悠醐の横顔は、どこか晴れやかだった。
彼からこの会への参加を提案されたとき、一葉は戸惑った。
悠醐にとって、決していい気持ちで会える相手ではないはずだからだ。だが、その意図はすぐに察せられた。

――この会は、ふたりにとって乗り越えるべきものなのだと。

(悠醐さんも、こんなに立派になった。私は……仮初だけど、彼の奥さんだから)

心でそう呟き、一葉は偶然鏡越しの自分の姿をそっと盗み見る。
まるで別人のように、頭のてっぺんから足先まで整えられた姿。

一葉の体のラインを際立たせるマーメイドワンピースに、高身長の彼と並んだときのバランスを考え、七センチヒールを選んだ。
さらに悠醐の知的な雰囲気を損なわないよう、深みのあるエメラルドグリーンで色味をまとめている。

前髪は少しだけ残しつつ、顔立ちがはっきり見えるよう思い切ってアップヘアにした。大ぶりのパールのイヤリングが、動くたびにさりげなく揺れる。

普段は控えめな服装を好む一葉にとって、かなり攻めた装いだ。
そのせいか、会場に入ってからどこからともなく視線を向けられている。女性からも、男性からも。

(やっぱり、浮いてるのかな)

不安が胸をかすめた、そのとき。

「綺麗だな」

低く抑えた声が隣から落ち、ドクン、と大きく心臓が跳ねた。

(今、なんて……?)

思わず見上げると、悠醐がわずかに目を細めていた。
その愛おしむような眼差しに、一葉の胸が苦しくなる。

悠醐から綺麗だなんて言葉が聞けるなんて。数か月前の自分じゃ、想像でいなかった。

「悠醐さんの方こそ、すごく素敵です」