生ぬるい風が肌にまとわりつく、七月の下旬。
一葉は悠醐とともに、六本木にある高級外資系ホテルにやってきた。
今日は神城メディカルグループ主催の懇親会に、悠醐の妻として参加する日だ。
会場はホテルの一階にある、ガーデンテラスと一体化したラウンジスペース。手広く業績を広げている、いかにも神城グループらしい場所だった。
悠醐がエントランス脇の受付で名を告げると、簡潔な確認だけで通される。
ガラス張りの壁面は大きく開放され、外の夜気がそのまま流れ込んでいる。
テラスには低めのテーブルとソファがゆったりと配置され、そこかしこでグラスを手にした人々が談笑していた。
集まっているのは各科の主任や教授、関連企業の重鎮たちばかりだが、必要以上に張り詰めている雰囲気はない。
「一葉、顔が硬いぞ」
「え……っ」
努めて冷静を保っていたのに、悠醐にはバレバレだったらしい。
ふと目を細めて笑いかけられ、一葉もつられて口元を緩める。
「本当は、すごく緊張してます。皆さんにお逢いするのもそうですが、やっぱり……」
一度は縁談を取り決めようとしていた、神城グループの御曹司と初対面するのだ。


