孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む

翌日、悠醐は気だるさを感じながら目覚めた。
重たい足取りで静まり返ったリビングに向かう。すでに開け放たれたカーテンの向こうに、東京の街並みが晴天に照らされていた。

あたりを見渡すが、人気を感じない。
今日は日曜日。一葉も仕事が休みのはずだが、家にはすでにいないようだ。
睡眠不足が蔓延しており、たいてい休みの日はいつもも好きなだけ寝ている。
悠醐は部屋の壁時計に目をやるとすでに正午を回っていた。

(だから腹が減るわけだな……)

最近激務に加え、夜間の緊急オペが続いていたのでしっかり食べた記憶がない。
冷蔵庫を開くと、家政婦が用意した食事がタッパーに入っていた。自分が今まで残していた食事は一葉が冷凍して、保存してくれていたようだ。

(倹約家の一葉らしいな)

食欲も十分あるし今日こそは食べたいと思うのだが、いかんせんまともに固形物をとっていなかったせいで、普通量は確実に食えないだろう。

どうしようか思い悩んでいると、視界の端に鍋が見えた。
蓋を開けると、ふわりと昆布の優しい香りが鼻をかすめる。

「一葉が作ったやつか?」

悠醐は一葉が時折キッチンに立っているのを知っていた。家政婦が作ったものはすべてタッパーに入っているはずなので、これは彼女が作ったもので間違いないだろう。

(量は八割ほど残っているな。一杯だけもらってもいいだろうか)

正直家政婦が作ったものより、一葉が作ったものに興味があるし、食欲をそそられる。
悠醐は少々居心地の悪さを感じながら、鍋に火をかけた。
ある程度煮立ったら火を消し、お玉ですくって器に移す。

(いただきます)