孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


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悠醐は一葉と帰宅したあと、すぐに自室に直行した。
大きなキングベッドに身を沈め、じっと照明を見る。

(俺は、なにをやっているんだ)
瞼の裏にあるのは、一葉が工藤の腕を引かれて歩いている姿。
当直明け、帰宅しようと歩いていると。偶然ふたりを見つけ、悠醐は足を止めた。悠醐は自分が油断したころに工藤が一葉に近づくと、わかってはいた。

けん制をするためにカフェに入ったつもりが、思いもよらない場面に遭遇することになった。

『わたしは、悠醐さんを愛してるの! 何も知らない人が、わかったような口、聞かないで!』

一葉が工藤に涙ながらに訴えた姿に、面食らった。
この一か月、彼女を苦しめるだけ苦しめた。
ここまで冷酷に接して、当然ながら嫌われているとばかり思っていたのに。彼女のまっすぐな姿が、五年前と重なった。
けなげな一葉の腕をとってから、ずっと胸が苦しい。

(俺は、一葉を恨んでいるのか?)

五年前の別れは、ひどいものだったのは否定できない。だが、心優しい彼女が、父親を、会社を助けるために止む負えず動いたものだ。本心は違ったとしたら、彼女にとっても自分との別れは苦しかったのではないか。

「本当はわかっていた……」

再会した一葉は何も変わっていなかった。
彼女があの頃のまま優しい性格だというのも、家族のために身を粉にして働く強さがあるというのも。ぜんぶ、わかっていた。

悠醐はそんな彼女に、再び惹かれてしまったというのに気づいていた。
だが、認めたくなかっただけだ。愛していないと言い聞かせて。

どんな形でもいいから、悠醐は一葉と一緒にいたかった。
悠醐は拳を握りしめる。

(もう、歪んだ形で縛りたくない。一葉を傷つけたくない。俺は五年前から変わらず……)