孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


冷たい眼差しを一葉に向けた悠醐は、茫然とした一葉の腕を力強く引き、店から連れ出した。
彼の背中を追いかけながら、一葉は先ほどの言葉に驚きを隠せない。

知らぬところで、工藤と自分について話が行われていたとは、夢にも思わなかった。
悠醐は一葉を病院から連れ出し、そのまま職員専用駐車場にやってくる。
彼女を強引に車の助手席に入れ、すぐに運転席に悠醐が滑り込んだ。
すると突然、端正な顔がぐっと近づいた。

「んっ……」

一瞬にして、柔らかい唇が自分のものを覆う。
悠醐がわずかに空いた一葉の唇に、舌が差しいれた
一葉は驚き、体を引こうとする。
だが悠醐は、彼女の頭を掻き抱き深い唇を重ねてくる。

突然のことに、頭が働かない。
嫌われているはずの悠醐に、キスされているのだ。
夢のような気分にもなり、同時に「なぜ?」と、困惑する。
その間も口内を探る舌の動きは激しさを増し、舌の皮膚から全身に甘美なよさがひろがっていった。

「ゆう、ご……さ」

そっと唇が離れていき、熱く視線が絡んだ。
彼は何かを言い出しそうな目で見てくるが、結局口を結んだ。

「体がやけに熱いな。君が望むなら。続きをしてやってもいいが」

悠醐はハンドルを握り、前を見据える。
今にも泣きだしそうな一葉だったが、なんとか首を横に振った。

窓の外の景色が流れていくのを、ぼんやりと眺めながら、一葉は必死に呼吸を整えた。
胸の鼓動が収まらない。唇に残る熱が、どうしても消えない。

(どうしてキスなんてしたの?)

悠醐とのキスは、あの頃と変わらず甘く、一葉の身も心も溶かしてしまう。
自分が愛されているのかもと、錯覚してしまうほどに……。