翌朝、一葉がリビングに起きていると、本来自室で眠っているはずの悠醐が、ソファの上に倒れていた。
どんなに遅く帰宅をしたときでも、今までこんな姿を見たことがなかったので、緊張が走る。
(悠醐さん。時間、大丈夫なのかな)
医者という仕事柄、どれだけ帰宅が遅くなっても、翌日に手術やカンファレンスがあれば早朝から病院に入ることも珍しくない。夜間は当直で院内に泊まり込み、そのまま朝を迎えて働き続ける日もあると聞いたことがある。
すでに時刻は六時半を回っている。
(こんな場所で眠っていて、本当に大丈夫かな……)
一葉は、物音を立てないようにおそるそる彼に近づく。
「あ……」
遠くからは見えなかったが、悠醐は眼鏡をかけ、腹には分厚い本が乗っていた。
(『The Remains of the Day』……英語の本)
その見た目からして、小説のようだ。
多忙な悠醐でも、まだこうして本を好きでいるようで胸が熱くなった。
「もうあのときの本は読んでないのかな」
一葉はそっと視線を上げ、彼の整った顔を盗み見る。
すっきりとした額、骨ばった高い鼻に、精悍な雰囲気の頬骨。黒く濃い長いまつげ。
形のいい薄い唇はかすかに開き、うっすら寝息がこぼれている。
(寝顔、久しぶりに見た)

