再会して悠醐はより〝あの別れの真相〟への理解を深めた。
一葉がいきなり自分を捨てた理由が、没落寸前の実家の会社を救うためだったというのは仕方がない。
だが血が繋がっているとして、五年前からあの男を救うメリットは一ミリもなかったはずだ。
一葉は愛されていなかった。野放しにされた挙句、結局会社の駒にさせられた。
それを安々と享受して、自分との未来を捨てた彼女に対して、やはりいい気はしない。
(一葉が過去の俺を忘れられていないのは、分かっている)
だが、あの時の純粋無垢な自分に戻ることはできない。
一葉が選んだ道の先に、今の悠醐がいるのだから。
会議室にそくぞくと各科の医師が集まり、症例の共有と方針の確認がすぐに始まった。
本日の議題は、急性心不全患者の術後管理と、合併症リスクの再評価だ。
「今回のケースですが、術後の心拍出量の低下が想定より早く出ています。循環動態の安定を優先するなら、カテコラミンの増量も検討すべきかと」
同僚である工藤の落ち着いた声が、会議室に通る。
「ただし、腎機能への負荷も無視できません。タイミングを誤れば、別の合併症を引き起こすリスクもある」
議論が続く中、悠醐は資料に視線を落としたまま、じっと耳を傾けていた。
(工藤は、詰めが甘い)
医師としていつも最後の一手に気づかない。サポートに回る分には申し分ないが、主導を握らせるとなると、わずかな気の緩みが致命傷になりかねない。
ペン先で資料の端を軽く叩き、悠醐はゆっくりと顔を上げた。
「……ひとつ、いいですか」


