氷のような視線と交わった、その直後。値踏みするような眼差しで、彼女は一葉の下から上へとなぞっていく。
一葉は居心地の悪さに、逃げ出したくなった。
(だめ、しっかりしないと。失敗しなければいいだけ)
言い聞かせている一葉の横で、悠醐がわずかに動いた。
「先日、医事科の篠宮一葉さんと結婚させていただきました。一番に、院長にご報告をしたくて」
「……つ、妻の一葉です。よろしくおねがいいたします」
悠醐に続き、一葉は頭を下げる。
だが院長からも、その隣にいる女性からも、一向に祝福の声は聞こえてこない。
しばらくの沈黙ののち、ふっと笑い声が部屋に響いた。
「五十嵐くん、これはいったいどういうことかな」
「ええ、見ての通りです。昔付き合っていた彼女と再会して、やはり一生をともにしたいと思いました」
顔を上げた悠醐は、硬い面持ちではっきりと院長に告げる。その横顔は真剣そのものだ。この言葉も、そしてこの姿も偽りだとわかりきっているのに、鼓動が速くなっていく。
「……では、わたしとは未来を考えられないということですね?」
語気を強めた女性は、生気を無くした目で悠醐を見つめる。
緊迫した雰囲気に飲まれそうになる。これほどまでに、院長との縁談は本格的に進んでいたのだと痛感する。
すると黙っていた悠醐だったが、やがて口を開いた。
「申し訳ございません。私は、彼女しか考えられません」


