一葉が悠醐からカードを受け取ると、彼はそう言い残し、部屋を出た。
だだっ広い部屋と、ブランド品。海外でも名を馳せる、一生かかっても手に入らないと思っていたものが、こんなにたくさんある。
(でも、どうしてだろう)
彼からのプレゼントなのに、少しも心が動かない。
はたと思い出し、無理やり握らされた白いショッパーを開くと正方形の箱が顔を覗かせる。
中に入っていたリングには、目を見張るようなきらめきを放つダイヤが中央にあしらわれていた。五年前に彼がプレゼントしてくれようとしていた質素なものとは真逆をいくような、存在を主張するような、超高級リング。
「悠醐さんは、変わったんだ」
そう独り言ちながら、一葉は少し大きめのリングを薬指にはめる。
部屋の照明に照らされたダイヤは、悲しいほどのきらきらと輝いている。
彼が住んでいた小さな家で過ごす時間は、温かくて幸せに満ちていた。安物だけど、お揃いのTシャツを着ている時間は、無敵のようにも思えた。彼が一生懸命働いてくれたジュエリーは、一生大切にしたいと思えるほど、美しかった。
一葉の胸の奥が、寂しさと懐かしさで熱くなる。
だが喉を鳴らして耐えた。生半可な気持ちでここに来たわけではない。〝今の悠醐〟の妻として全うすると、あのとき誓ったのだから。
その翌日。一葉は悠醐に言われた通り、身なりを一新させて出勤した。
彼が用意してくれたものはすべて一級品だったが、変な派手さがない。
一葉がもともと持っている上品な雰囲気を、より高めてくれるような品ばかりだった。
「ね、篠宮ちゃん、その指輪は?」
医事課に到着してからすぐ、藤木先輩に突っ込まれる。
一葉は一瞬言葉に詰まったが、すぐに昨日の悠醐の言葉を思い出した。
「実は……先日、結婚しました」
「えええ―――!」

