冷たい表情で言い放った悠醐に、サッと体温が下がる。
彼に案内されて踏み入れた部屋は、ひどく整っていた。
床は光沢を抑えた大理石調で、足音がわずかに反響する。壁際には天井まで届くガラスのキャビネットが並び、中には腕時計や小物が間隔を空けて収められていた。
リビングの中央には、直線的なデザインのレザーソファとローテーブル。どれも新品のように手入れされていて、生活感はほとんどない。
照明は落ち着いた間接光で統一されていて、室内全体に均一な明るさが保たれていた。
一葉の部屋だと案内された部屋は、必要最低限のものしか置かれていなかった。
シングルベッドと小さなデスク、それにクローゼット。壁も床も無機質で、装飾は一切ない。
ただ、床にだけ違和感があった。
高級ブランドのショッパーが、いくつも無造作に置かれている。紙袋の角は崩れておらず、中身が入ったままのものもあるようだった。統一感のないロゴが並び、この部屋の簡素さと噛み合っていない。
「えっと、これは……?」
「明日からその中に入っているバッグ、それから洋服を取り合えず着るんだ」
(え――?)
困惑して固まる一葉に、悠醐は淡々と説明を続ける。
「君のその、年季の入ったバッグ……それから何シーズン使いまわしたか分からないそのスカートは、俺の妻として不適切だ。そのゴミ袋を使ってくれてもいいし、保管するのは勝手だが、院内では絶対に使うな」
悠醐はベッドに無造作に置かれていたゴミ袋を指さす。
「それから――……」
思い出したかのように言うと、彼は手に持っている小さな白いショッパーを一葉に差し出した。
「……っ、これは?」
「結婚指輪だ」

