孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


ひどく落ち着いた声で悠醐は尋ねる。

『え……?』

誠は一瞬、言葉を失った。何かを思い出そうとするように眉間に皺を寄せるが、やがて小さく首を振る。
悠醐は男のその反応を眺めながら、一歩だけ距離を詰めた。

『五十嵐悠醐。あなたに昔排除された、一葉の元恋人です』

はっきりと言い切った瞬間、誠の顔色が変わった。

『……なっ……』

息を呑む音が漏れる。
瞳が揺れ、言葉にならない動揺が、そのまま表情に浮かび上がった。
悠醐はさらに半歩近づく。誠の左胸――ペースメーカーが埋め込まれているあたりへ視線を落とし、ためらいもなくトン、と指先で軽く触れた。

ごくわずかな接触なのに、誠の肩がびくりと跳ねる。

『ご安心ください』

ひどく穏やかに医師の姿で悠醐は笑う。

『あなたの命は、私が責任をもって管理させていただきます』

誠の喉がひくりと鳴った。胸元に触れられた感触と、その言葉の重さが結びついたのか、顔色が目に見えて青ざめていく。
だが悠醐は視線を外さない。

『一葉と結婚します。これ以上私たちの邪魔をするようでしたら、次こそは許しません』

悠醐は、静かに告げる。
誠は何か言い返そうとして口を開きかけるが、言葉にならないまま喉を鳴らすだけ。視線を逸らすこともできず、ただ感情が抜け落ちた男を見上げている。

悠醐は視線を逸らし、瞼に残った男の残像を嘲笑った。



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