思いのほか、大きな声が出た。
口に出してから、かたかたと唇が小刻みに震えている。悠醐は振り返って、まっすぐ一葉を見た。
「他に何か?」
「ゆう……い、五十嵐先生に、ずっとお礼が言いたくて。今回こんな父と私を、救ってくださって本当にありがとうございました」
悠醐は黙って、一葉を見ている。
その澄んだ瞳から逃れたい気持ちに気持ちになるが、一葉は強い気持ちで見つめ返した。
「それと……五年前は、本当に申し訳ございませんでした。ずっと、ずっと五十嵐先生に謝りたくて」
すると悠醐は、唇の端を微かに釣り上げた。
「話はそれだけか?」
「……いえ、このままじゃ、私の気持ちが収まりません。謝罪とお礼の意味も込めて、五十嵐先生の希望額で包ませていただけませんか……」
一葉は、かすれた声で、今日この日までずっと考えていた気持ちを吐き出した。
悠醐への贖罪を晴らすには、金しかない。どこまで考えても、方法がそれしか思いつかなかった。
悠醐は、震える一葉をじっとその場で見つめていた。
表情は一切変えず、感情が見えてこない。
(お金で解決しようなんて、やっぱり軽蔑される……?)
掛け布団をきつく握り、重たい沈黙に耐えていると――。
悠醐の気配が、微かに動いた。
「そこまで言うのなら、君にひとつ頼みがある」
「え……?」
一葉が顔を上げた直後、鋭い眼差しに射られた。
強い瞳に息を呑むと、彼はその薄い唇を開く。
「俺と結婚してくれ」

