言われるままにすると、悠醐は瞳の動きを確かめるように、至近距離からじっと見つめてきた。
観察するような視線に、息が詰まる。
「貧血と脱水症状がみられる。最近寝不足だったのでは?」
「……はい。睡眠時間は平均四時間くらいでした」
「仕事を制御することはできないのか」
近い距離でまっすぐ見つめられ、心臓がどきりと大きく跳ねる。
彼の透きとおるような瞳に、自分の激しく動揺する顔が鮮明に映っていた。
「そう、ですね……しばらくは難しいかもしれなくて……」
一葉がなんとか答えると、悠醐は何も言葉を発しないまま、彼女の顔を見つめた。
重たい沈黙が落ちる。
彼に触れられた部分から、じわじわと熱が広がっていく。
先ほど倒れたときに感じた彼の香りが、今もより濃く近くにあった。
――近い。
彼が、すぐそばにいる。自分だけを見つめてくれている。
呼吸が乱れそうになるのに耐えていると、次の瞬間、ふつりと糸が切れたように、一葉の頬から手を離した。
「君もつくづく大変だな。どこまでも父親に振り回されて」
悠醐の一歩踏み込んだ発言に、一葉は息を呑む。
(やっぱり、悠醐さんの目にはそう映ってるんだ)
自分をことごとく馬鹿にした没落した自分や父親がこんな無様な姿になり、同情や、哀れみの念を抱かない方がおかしい。
分かっているのに、胸がずきずきと痛んだ。
「……いいえ。父は大切な家族ですから、支え合うのが当たり前です」
一葉が消え入るような声で告げると、悠醐の目が微かに細くなる。
そしてすぐにふっと鼻で笑うと、彼女に背を向ける。
「まだ君の体力は回復していない。その点滴が終わったら、看護師に伝えて自由に帰ってくれていい」
悠醐は淡々と、一葉に流れを説明する。もう、先ほどの話はなかったような素振りだ。
「は、はい。わかりました」
一葉の声に反応することなく、悠醐は処置室から出ようとする。
一葉の緊張はピークに達していた。
今、言わなくては。こうやってふたりきりで話す機会は、もうないかもしれない。
「あの、待ってください……!」

