そのまま気を失った一葉が目を覚めたのは、ベッドの上だった。
「篠宮さん、大丈夫ですか?」
「あ……」
ぼんやりとした視界の中見えてきたのは、手首に繋がれたルートを替えてくれながら優しく微笑む看護師だった。
一葉は重たい体を起こしながら、かすかに痛む頭を抑える。
「すみません。私……お父さんの手術を待っているときに……」
「ええ、そのまま貧血で倒れて、この処置室に運ばれました。ちょうどお父様の主治医の五十嵐先生が近くにいたので、すぐに対応してもらえますたよ」
「そう……なんですね。お騒がせして申し訳ございません」
さらに体が重い。悠醐に、また迷惑をかけてしまった。
するとルートを替え終えた看護師が、笑顔で一葉を振り返る。
「いえ……お父様が倒れてから、気が気じゃなかったでしょうから。ちなみに、お父様も一般病棟に移られて、落ち着いているみたいなので安心してくださいね。あとで五十嵐先生が様子を見にこられると思うので、少し休んでいてください」
「はい……ありがとうございます」
看護師がいなくなり静まり返った部屋で、一葉はぐっと掛け布団を強く握った。
(悠醐さんに会うのが怖いけど、助けてくれたこと……ちゃんとお礼を言いたい)
彼に伝える内容を考えていると、コンコンコン、と三回ノックの音が聞こえてきた。
緊張が走り、体が怖がる。一葉は深呼吸しながら、そっと口を開いた。
「どうぞ」
扉が開いて入ってきたのは、予想通り悠醐だった。
術着から白衣姿に代わっている。いつも綺麗にセットされている髪が無造作になっており、術後のけだるさが滲んでいた。
「今、看護師から起きたと聞いた。体調は?」
「まだ体が重くて、頭が少し痛いです」
そう答えた一葉のもとに、悠醐はまっすぐ向かっていく。
彼との距離はほんの数十センチだ。
急に距離を詰められて戸惑う彼女の頬に手をかけ、わずかに顔の向きを上げさせた。
「口を開けて」
短く言われ、一葉は素直に従う。
「……いい。次、目を見開いて」


