孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


『一葉。愛してる』

頬を伝う涙を、やわらかい唇がそっと拭う。
そっと体を起こした悠醐は目を細め、愛おしむかのように、一葉に熱い視線を送っていた。

お腹の奥からじんと彼の体温が広がっていく。彼を初めて受け入れた身体は、痛みに震えそして足の指先まで幸せに満ちていた。

『悠醐さんと溶け合ってるみたい。すごく、気持ちいい』

目を閉じた一葉は、彼の逞しい胸板に頬を擦り付けた。
いつも孤独だった。だが今は心から信頼を置き、大切にしたいと思える男性とひとつになって、言葉にできない安心感に包まれている。同時に、彼を失うのが怖い。繋がったのに、怖かった。

『ずっと一緒にいてね。悠醐さん。わたしを、ひとりにしないで』
『――もちろん。君をひとりにしない』

強く強く抱きしめられ、その肌のぬくもりに安堵した一葉は目を閉じた。
まどろむ意識の中、悠醐は髪を優しく何度も撫でてくれていた。

(好きだよ、悠醐さん。大好き――)

視界が暗転し、次の瞬間にぼんやりと自分の部屋が広がった。

「夢……?」

重たい頭を起こし、カーテンの隙間から窓の外を見る。
やわらかな朝の光と、ベランダにやってきた鳩の鳴き声。いつもと変わらない、朝の光景。

「悠醐さん、久しぶりに夢に出てきてくれた……」

一葉は自分の胸をぎゅっと抱きしめる。今なら、彼のぬくもりが残っているような気がして。

(そんなこと、あるわけないのに)

 悠醐に愛されていた自分に戻りたい。この五年間で、何度そう思ったことだろう。

 叶わない夢だとわかっていた。だが、少し都合よく夢を見ていたきらいがあった。
 昨日再会した彼にはっきりと現実を突きつけられた。
 もう自分は愛されていない。そう思い知らされた。