家族は朝食を終えた。詩はしばらく芝生の上を歩き回っていたが、やがて眠たそうに目をこすり始めた。
「詩、眠い?」
「ねむくない……」
そう言いながら、声はもうとろけている。
悠醐は何も言わずに詩を抱き上げた。
そのまま木陰に敷いたブランケットへ運び、そっと寝かせる。
風が冷えないように、上から薄いブランケットをかけた。眠る娘の髪を、悠醐の指先が静かに撫でる。
(まるで、わたしがいつも眠るときにしてくれるみたいね)
そう――悠醐は焼きもちな詩が見ていないところで、こうして一葉も同等に溺愛しているのだ。
「本当に一葉にそっくりだな。詩は」
悠醐は小さくそう呟くと、すぐそばにいた一葉の腰を掴んで、彼女を膝の上に座らせた。
「ゆ、悠醐さん……? 恥ずかしいよ」
「誰も見ちゃいない」
そう言って顔を傾けると、頬にそっと唇を押し当ててきた。
「詩も可愛いけど、俺にとってプリンセスは一葉だけだ」
悠醐の言葉にカッと頬が熱くなる。
マンハッタンに移り住んでから、悠醐はこれまで以上にもっとストレートに愛情を表現するようになった。だからいまだに、こんなふうに一葉はドキドキさせられっぱなしなのだ。
「悠醐さんは、じゃあわたしにとってのプリンスです」
「それは違和感があるな。……堕天使の方が、まだしっくりくる」
「なにそれ」
もう悠醐は、一葉にとって悪魔でも堕天使でもない。ただ愛を与え見守り続ける存在――。
「じゃあ、エンジェルにしましょう」
不服そうに眉を寄せた悠醐は、もうこの話は終わりだと言わんばかりに、一葉の唇を奪った。
光り輝くこの時間が永遠だと疑わず、一葉は悠醐の腕に身を委ねた。
END.


