一葉はくすっと笑う。
「私に似たらそうかもしれないけれど……この子、手先が器用なんです。もしかしたら、夫みたいに医者になるって言い出すかもしれません」
「まあ、多才なこと」
ジェニファーが目を細めると、詩はむっと頬を膨らませた。
「まま、はやく。読んで、読んで!」
「あぁ、ごめんね」
詩はこの通り、本が大好きだ。
この名前をつけたのは、本をきっかけに始まったふたりの時間を、忘れたくなかったから。
言葉を重ねて、心を探して、ようやく辿り着いた場所が詩だから。
結局、詩の熱意に押し切られる形で、そのライオンの絵本を購入することになった。
その足で、三人は近くのセントラルパークに向かう。
通りを抜けると視界が開け、セントラルパークの芝生と新緑が広がっていた。
春のやわらかな風が吹き抜け、都会の中とは思えないほど穏やかな空気が漂っている。
多くの人が訪れているはずなのに、あまり人の気配を感じさせないほど広かった。だから、絶対に知り合いには会わないと思ったはずだったが。
「Dr. Igarashi! 偶然ですね!」
(へ……?)


