孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


詩は目をまんまるにして、ページいっぱいに広がる森とライオンを見つめる。

「The little lion was brave, but sometimes he felt lonely.
(その小さなライオンは勇敢でしたが、ときどき寂しく感じることもありました)」

「……いやよ。らいおんさんが、かわいそう」

ぽつりと零れた声に、悠醐の目元がわずかに緩む。

「詩は本当に優しいな」

低い声でそう言いながら、彼は娘の頬にそっと触れた。
指先は驚くほどやわらかく、触れられた詩は安心したように彼のシャツを掴む。

「ぱぱ、らいおんさん、ひとり?」
「最後まで読めばわかる」
「……ほんと?」

悠醐のあまりに真剣な表情に、一葉は思わず笑ってしまう。

「ちゃんとね、ライオンさんにも大切な人ができて、変わっていくの」

その言葉に、悠醐はほんのわずかに口角を上げた。どこか懐かしむような、やわらかな眼差しだ。

(この人が、こんな顔をするなんて……)

二年前の自分に話しても、きっと信じなかっただろう。

そのとき、近くを通りかかった店員のジェニファーが、楽しそうに声をかけてきた。
「詩は本当に感受性が豊かね。将来はシンガーかしら。それとも物語を書くのかしら」