孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む




一葉が本を受け取ると、詩はツインテールを揺らし、得意げに胸を張る。
詩は、つい先日三歳になったばかりだ。
大きな瞳に、やわらかな茶色の髪。ふとした角度では悠醐に似ているが、ほとんどの人が一葉似だと言う。

「詩、今日はパパが本を読んでやろうか」
「いい! パパよりママのほうが上手だもん!」

きっぱりと言い切られ、悠醐は目に見えて肩を落とした。

(もう……詩には本当に敵わないんだから)

普段は、無駄な感情を一切表に出さない男だ。
ニューヨークでも指折りの名門病院で、心臓外科医として第一線に立ち続ける――そんな冷静で隙のない彼が、詩の前では簡単に崩れる。

甘い声で名前を呼ばれれば、それだけで判断を誤るし、どんなお願いも、最後は「仕方ないな」と頷いてしまう。
だからこそ、一葉が意識して手綱を握る。

そうでなければ、この子はきっと、あっという間に甘やかされてしまうから。
ふかふかの椅子に腰を沈めると、悠醐は自然な動きで詩を膝の上に抱き上げた。

かつては感情の読めなかったその腕が、今は壊れものを扱うように娘の体を支えている。
一葉は隣に座り、そっと絵本を開いた。

「Once upon a time, there was a little lion who lived in a very big forest.
(むかしむかし、とても大きな森に、小さなライオンが住んでいました)」