ふたりが渡米してから二年――。
悠醐は、かつて在籍していた指導医の推薦を受け、ニューヨークの名門・Mount Sinai Hospital の心臓外科に復帰した。
海外での臨床経験と資格が認められ、段階的に執刀へ戻り、今では第一線で手術を任されている。
そして一葉はというと、無事に元気な女の子を出産し子育てに邁進している。
「まま、これ」
本棚の隙間から、小さな手が一冊の絵本を引き抜いた。
表紙には、色鮮やかなたてがみを持つライオンが描かれている。堂々としていて、どこか威厳すら感じさせる。
(ふふ、なんだか悠醐さんみたい)
春風が街路樹の若葉を揺らし、新緑がマンハッタンの街をやわらかく彩る季節。
一葉のお気に入りの場所、アルベルティーン。
マンハッタンでも指折りの美しい書店へ、悠醐、そして愛娘の詩とともに足を運んだ。ここは外の喧騒が嘘のように静かで、妊娠していたころからよく足を運んでいた場所だ。
絶対的な存在感とカリスマ性を持つ外科医。時折見せる鋭い眼差しが、ふと重なった。
「いい本を見つけたね」


