胸の奥に、確かな想いが芽を出す。
(私たちだったら、この孤独を乗り越えていける気がする――……)
その予感通り、悠醐との関係は穏やかに、そしてゆっくりと時間をかけて深まっていった。
初めてのキスも、初めての夜も、すべてが彼とだった。
季節が巡るたびに、ふたりの距離は少しずつ近づき、想いはより強く結びついていく。
(結婚するなら、悠醐さんがいい)
自然と、そんな未来を思い描くようになっていた。
悠醐の暮らしは、一葉よりもずっと質素だった。
ワンルームの小さなマンションに住み、医学部に通いながら、カフェのアルバイトと塾講師を掛け持ちして生活を支えていた。
忙しい日々の中でも、悠醐は一葉と過ごす時間だけは、できる限り大切にしてくれた。そんな彼の姿を知るたびに、最初にもらったあのネックレスが、どれほど無理をして贈られたものだったのか、あとになってじんわりと胸に沁みてくる。
一葉は、自分の家である広い屋敷にいる時間よりも、悠醐と過ごす狭い部屋のほうが、ずっと心が落ち着いた。
彼といると、孤独がやわらいでいく。それが、何よりも心地よかった。
やがて悠醐は大学を卒業し、無事に研修医となった。
一葉もまた、専攻している文芸の知識をさらに深めるため、大学院への進学を目指していた。
そんな穏やかな日々が続いていた、あるとき――。
「一葉、話がある」
父――誠が、硬い表情のまま、大学から帰宅したばかりの一葉に声をかけた。
こんなふうに話しかけられるのは、いつ以来だろう。ただならぬ空気を察して、体が自然と強張る。
「どうしたの? お父さん」
一葉は応接間のソファに腰を下ろし、正面に座る父と向き合うとできるだけ平静を装いながら、言葉を待った。
すると父は、ぐしゃりと頭を掻きむしり、大きく息を吐いた。
「投資に失敗した。……自己破産寸前なんだ」
(え――?)

