(うそだ)
頭では否定しているのに、心が一瞬だけ揺らぐ。
清香はそれを見逃さない。
「あなたって、つくづく可哀そうな人ねー!」
その言葉に、一葉はゆっくりと息を吸った。そして小さな命の存在を確かめるように、そっと腹を撫でる。。
(違うわ。悠醐さんは、そんなことしない)
これまで見てきた彼の姿。自分に向けられてきた言葉と、触れ方。
それがすべてだ。
「私は、私が見てきたものを信じます。あなたの言っていることの方が、嘘では?」
視線を逸らさず、はっきりと言う。
声はまったく震えていなかった。
一葉の意志が通ったその一声で、空気ががらりと変わった。
「腹立つなぁ!」
清香が低く吐き捨てた、次の瞬間。
突然伸びてきた強い力に、肩を突き飛ばされた。
「いやあ!」
バランスを崩しかける。階段を転げ落ちそうになるが、なんとか踏ん張り、体勢を保つ。だが再び、清香の手が容赦なく伸びてきた。
「消えろよ!」
清香の憎しみがこもった声が、廊下に響いた、そのとき。
(守らなきゃ)
その一心で、一葉は必死に体を丸める。衝撃から、お腹だけは遠ざけるように。
そのとき――背後から、力強く抱きとめられた。
「一葉……!」


