孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


ただ、このまま京極第一病院傍で、一葉と暮らしていくのはリスクが大きい。
というのも、院長は露骨ではないが、確実に圧をかけてくる。
診療方針への不当な口出し、根拠のないクレーム。
そして……。

「娘と結婚しないのなら、ここでの立場は保証できない」
先日の院長の発言は、あまりにめちゃくちゃで。もう一緒に働く気が失せるものだった。

(くだらなすぎる)

医師としての評価ではなく、私情で人を縛ろうとする。だが問題はそこではなかった。
自分よりも、一葉に影響が出る。
それが一番の懸念だ。今の彼女の体には新しい命がすくすくと育っている。心身ともに不安定な時期だ。
そんな中で、病院内の人間関係や圧力に晒すわけにはいかない。

(ここにいること自体が、リスクだ)

悠醐はゆっくりと顔を上げる。

「……行く。だが、少しだけ待っててくれないか。妻と話したい」

ダニエルが一瞬だけ目を見開き、すぐに笑った。

「もちろん。ハニーの意見が、一番大切だからね」

悠醐はものわかりのいい元同僚に思わず笑った。

(一葉を安全な場所へ。俺たちを邪魔するものがいないところに、行くんだ)

悠醐にとって、もはやキャリアよりも大切なものだ。
一葉と子供を守りたい。ただそれだけだった。



・・・