するとふいに強い視線を感じて、そちらに視線を向けた。
工藤だった。
工藤は最近挑発的な目を向けてくる。以前はあれだけ話しかけてきたのに、今ではあからさまに避けられているほどだ。
だが悠醐にとっては、心に咎めることでもなかった。
むしろもう一葉との関係に口出ししてこないだけで、安堵さえ覚えていた。
悠醐が着席すると、教授がゆっくり頷いた。
「……いいでしょう。さすがですね」
「やっぱり五十嵐先生ってキレるよな」
医局員の囁きが耳に入るが、悠醐は気に留めない。
正直、今の悠醐は無敵状態だ。
指名での執刀依頼が激増し、難しい症例ほど自分のもとに回ってくる。この病院に赴任して三か月。そう感じることが最近より増えた。
もしかしたら、愛する人とともに生活をしているからか。
(たしか五年前もそうだ)
一葉と半同棲していた時も、悠醐の評価がうなぎ上りだったのだ。
(一葉といる自分は無敵なんだな)
そんなことを思いながら医局に戻ろうと、していると突然肩に手が乗った。
「五十嵐くん」
低く名を呼ばれる。
振り返ると、そこには不気味な笑みを浮かべる院長が立っていた。
「今、少しいいかな?」
悠醐はそのとき、直感でまずいことが起きていると感づいた。
まったく攻撃しなくなった清香。突然現れた院長。
(いつかこんな日がくる気がしていたが、思ったより早かったな)
漠然とした不安を抱えながら、悠醐は院長の顔をまっすぐ見つめ返した。
・・・


