孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む

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「美味いな」

帰宅した悠醐は、昼間の宣言どおり、一葉の手料理に箸を進めていた。
今日並んでいるのは、鶏の照り焼きと、だし巻き卵。
再会してからは味噌汁程度しか口にしていなかったが、こうして改めて食べてみると、やはりどれも舌に馴染む。

(変わらないな)

いや、少し違う。変わっていないのではなく、磨かれているのか。

「……少し、腕を上げたか」

思ったまま口にすると、一葉は一瞬だけ視線を揺らし、困ったように微笑んだ。

「篠宮の会社が倒産してからは、外食もほとんどできなくて……自然と、自炊ばかりになっていたので」

その言葉に、わずかに空気が沈んだ気がする。悠醐は内心舌打ちをした。

(余計なことを言った)

篠宮誠の話題は、まだ触れるべきではない。いや、もう今後触れない可能性も高い。
一葉はあの海での会話の後、父親との縁を一切切ると言っていたのだ。
ともすれば、悠醐からの支援は自然と打ち切られることになる。そうなっては、心臓が悪いあの男は仕事もできないで、どうやって生活をしていくのだろう。

かなり苦しい生活を強いられるには違いない。
一葉は「それでもいい」と言っていたが、いち医者としてそれを実行することはできなかった。
とにかく彼の話題はタブーだ。わかっていたはずなのに。

「悠醐さん、あの。お替わり……持ってきますね」

無理に作った笑みのまま、一葉が立ち上がろうとする。
悠醐はその腕を、無意識に引いた。

「いい」