孤高の心臓外科医は、憎しみの元恋人を熱情で囲い込む


工藤の声に驚いた一葉は、反射的に振り返った。工藤は真剣な目で一葉を見据える。

「五十嵐先生と結婚なんて、馬鹿げてる。君は幸せになるチャンスを自分で棒に振ったんだよ」

まるで自分と結婚したら幸せになれたのに、と言いたげな発言だ。
呆れてため息を吐きかけたが、一葉は直前で飲み込んだ。

「先生も変な噂を聞いているみたいですが、わたしと悠醐さんは離婚しませんし、とても仲良しです。ご心配なく」

ぴしゃりと言い切ると、工藤は悔しそうに表情を歪めた。
そのままくるりと一葉に背を向け、颯爽とその場を立ち去る。

「はは、一葉は俺のことになると強くなるな」

すぐそばで聞こえてきた声にはっとする。
振り返ると、すぐ間隣の処置室から笑顔の悠醐が顔を覗かせた。

「恥ずかしい。聞かれてたなんて……」
「かっこよかったよ。惚れ直した」

悠醐がこちらに向かって手を伸ばしてきたので、周りに人がいないか確かめてから、そっと指を重ねる。
触れた瞬間、心拍が一気に上がっていく。

(こんな場所で……)

だが離す気にはなれない。
あたりを気にする一葉を見て、悠醐はわずかに目を細めた。