敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~


一刻も早く久登に会いたい。
会って、強く強く抱きしめたい。そして、おかえりと笑顔で伝えてあげたかった。
 
それから、久登と連絡がついたのは数時間後だった。花梨はメッセージで、初めて彼にわがままを言った。
子どもたちが寝静まった夜中に、一瞬だけでいいから顔を見せに来てほしい、と。

久登が疲れ切っているのは分かっていた。それでも、どうしても彼の顔が見たかった。
事故のあと、久登は事情聴取や報告に追われ、すべてが終わったのは夜になってからだったらしい。
それでも彼は、その足で、花梨と子どもたちが暮らすアパートまで来てくれた。

高級外車特有の低いエンジン音が、部屋の外から聞こえてくる。
その瞬間、花梨は思わず身体を強張らせた。
すやすやと寝息を立てる子どもたちを横目に、花梨は音を立てないよう、そっと部屋を抜け出す。

「花梨……」
アパートの前に、久登が立っていた。彼の顔には、はっきりと疲労が滲んでいる。
それでも、花梨を見つめる笑顔は、いつものように甘い。
視線がぶつかった瞬間、花梨は無我夢中で階段を駆け下りていた。

次の瞬間には、久登の胸に飛び込むようにして顔を埋める。

「……っ、よかった……っ。久登さん、おかえりなさい」

声が崩れる。
久登は一瞬だけ動きを止め、それから強く、抱きしめ返してきた。
その腕の力は、まるで彼女の存在を確かめるようだ。

久登自身も、相当不安だったのだと、花梨は悟る。

「花梨。ただいま。ちゃんと、帰ってこれた」
「うん……久登さん……ありがとう……」

花梨は何度も息を吸い込みながら、頷いた。彼の体温が、どうしようもなく愛おしい。
そこにいてくれることが、どれほど有難いのかを思い知る。

「怖かった。久登さんが、いなくなっちゃうんじゃないかって」

涙混じりにそう漏らすと、久登の腕が、わずかに強くなる。

「俺も怖かった。君たちに、会えなくなるのが……」

その一言が、胸を締め付けた。