敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~



花梨はそう口にしながら、大きなショックを受ける。
事実無根の内容。だが、根も葉もない、とは言い切れない。実際に久登には婚約者――乃愛がいたのだ。
乃愛の立場から言えば、そう捉えられてもおかしくは内容ではあるのだ。

だが一体、どうしてこのような具体性のある話がスターロードのCAの中で広がってるんだろう……?
すると璃子は、腹立たしいと言わんばかりに、手に持ったコーヒーをぐびっと一口、口に含んだ。

「私、しっかり言っておいたから、花梨はそんなことするような人じゃない。ふたりは、自分たちの意志で一緒になったこともね」
「ありがとう。璃子……」

彼女の友達想いな一面に、胸が熱くなる。そして、この騒動が、璃子のおかげで収まってくれたらいい――そう思うのだが。

「もう噂を流している犯人は分かってるの。スターロードのグランドスタッフ、鷹宮乃愛よ」
「え……?」

〝乃愛〟――その名前を聞いた瞬間、サッと血の気が引いた。璃子が以前から要注意人物として教えてくれた〝鷹宮〟とは、乃愛のことだったのだ。

だから、どこかで聞いたことのある名前だったのだ。
それにしても、乃愛まで空の業界にいるとは驚きだ。彼女は社長令嬢だったはずなのだが。

(まさか、久登さんを追って、ここまで来たの?)

黙りこんで困惑する彼女を見て、璃子は心配そうに顔を覗き込む。

「花梨。……嫌な話をしてしまって、ごめんなさい」
「う、ううん。璃子、教えてくれてありがとう。最近おかしいと思っていたから、知れてよかったわ……」

花梨がテーブルに置いた薬指のダイヤがきらりと光る。これはプロポーズの際にもらった婚約指輪とはまた違う、日常用に使用する結婚指輪。プラチナ素材で上品なデザインだ。久登もまったく同じデザインを使用している。
よくよく考えたら、このリングを身に着けてから周りの様子がおかしくなったような気がする。

「花梨。このこと、久登さんにも共有しておいたほうがいいと思う。鷹宮さんは、彼の知り合いだし、直接本人が注意するのが、一番だよきっと」