敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~

花梨が機内後方のギャレーで、機内食を積んだワゴンの最終確認をしていると、突然CAに話しかけられた。彼女は厳しい表情で、こちらを見ている。
花梨は緊張しながら彼女に向かい合う。

「この前積み込まれた機内食、蓋が開いた状態で届いてたの。ワゴンの中がひどいことになって、通路清掃まで入ったわ。これ、次も同じことがあると困るんだけど」

花梨は反射的に頭を下げ、「申し訳ありません」と短く答える。
だが内心では、わずかな違和感が残っていた。
その便の搭載作業は、何度も確認を重ね、問題なく終えたはずだ。蓋のロックも、配置も、いつも以上に慎重にチェックした記憶がある。
それでも、実際にこうして指摘を受けた以上、「違う」とは言えない。
しかしそれ以降、似たような指摘を受けることが増えていった。
些細なこと、以前なら問題にならなかったような点まで、細かく声がかかる。花梨は次第に疲弊し、胸の奥に、はっきりとした疑問を抱き始めていた。

(何かが、おかしい)

CAたちが、花梨を見る目が以前より厳しいのは明らかだった。わざとらしく、彼女を見て耳打ちするCAまで出現し、いよいよ一人で抱え込むのが辛くなってきた。

だが今、重要な局面にいる久登には相談できない。余計な心配をかけて、集中力がかけてしまうのが嫌だった。
そんな日々が続いていたある日のこと。

「……花梨、あのさ」

CAの友人である璃子に呼び出され、花梨は彼女と羽田空港内になるカフェで落ち合う。
璃子は疲弊した花梨を見て、ためらいがちに口を開いた。

「花梨と久登さんの変な噂が、CA内に出回ってる」
「え? どういうこと?」

呆気にとられる花梨を見て、璃子はため息を吐きながら頭を抱える。

「私、昨日仲間が噂してるのを、偶然聞いちゃって……。花梨が昔、久登さんの婚約者から略奪したっていう内容で……しかも彼を騙して子供を作って、結局無理やり結婚したっていう……」

「な、なにそれ……あり得ない」